アートスパークHD(3663) 最高値を更新でこれだけは押さえておきたいポイント

アートスパークHD(3663)
5月26日の終値は3570円(+90円)となっております。

5月24日に6月末を基準日とし、1株を4株に株式分割を発表したことを契機に、今週は年初来高値を来更新する展開となっております。

足元では強気な相場が継続しているものの、短気的な過熱感も然ることながら、株価は2016年高値(上場来高値水準)に達しており、この水準では戻り売りが意識され易い点に注視。

目先的には調整が入る可能性も踏まえ、ファンダメンタルズやチャート分析を通して、今後のポイントや見通しを記事にしました。

 

※アートスパークHD(3663)の日足チャート

 

アートスパークHD(3663)は、マンガ・イラスト・アニメ制作ソフトウェアの企画・開発をするクリエイターサポート事業を中心。一方で、車載機器向けや家庭用・業務用の組込み機器ソフトなどに採用される、アニメーションによる高度なユーザーインターフェースの作成を支援する開発ツールを提供する企業でもあります。

株式市場のテーマ性としては、上場時はZMP関連銘柄・自動運転関連として注目を浴びた経緯がありますが、成長が期待される分野において、業績面でも売り上げを伸ばしているという実力が今の相場に反映されているものと見ております。

ただ、業績面ではやはり主力事業のマンガ・イラスト・アニメ制作ソフトウェアの販売が好調(2020年12月期及び今期見通し)で、背景には「コロナ禍による巣ごもり需要を取り込んだ」影響が大きいと見ております。

 

この分野の主力ソフトである「CLIP STUDIO」は通称「クリスタ」と呼ばれ、本格的にアニメイラストを始めたいユーザーにとってはワコムの液タブ(液晶タブレット)とセットで有力候補に入るツールとして広く認知されております。海外展開にも積極的で、同ソフトの契約進捗率は、コロナ前から比較して実に二倍強まで伸びております。

車載機器向け・家庭用・業務用のインターフェース組込み機器ソフト事業においても、搭載台数を大きく伸ばしており、事業全体的に、前期(20年12月期)以降はいよいよ利益転嫁が進展する兆候が強まっております。今期見通しにおいても過去最高益を見込みますが、会社発表の見通しはやや控えめな印象もあり、今後の増額修正期待の高さから、相場は将来を織り込む動きが続く可能性があると感じます。

 

また、この銘柄は弊社「個別銘柄戦略レポート」において、ヘッジファンドが狙う有望案件として「投機性も兼ね備えた相場」へ発展する見込みのある銘柄としては配信した経緯があります。配信は3月30日に1800円台後半で取り上げました。

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この当時から株価は大きく上昇しておりますが、ファンダメンタルズ面において、主力事業の契約の伸びが天井を打った印象を受けず、今後の株価にも依然「のびしろ」があると見ております。

 

業績予想に対する時価PERは約30倍と割安感はありませんが、事業体質自体が、売り上げの伸びがそのまま利益に転嫁され易いフェーズに達してきた印象が強く、上記PERにおいても今後低下する可能性に注視しておく必要があります。

上記の様にファンダメンタルズは良好ですが、テクニカル面では短気的な過熱感の高まりや、株価が2016年高値(上場来高値水準)に達した点には注意する必要があります。当然ながら、この水準を目処に利益確定を意識する投資家も多いと思われますので、売り圧力が強まる可能性は意識しておく必要があります。

 

ただ、株式分割発表して以降、出来高が伸びていますので、需給面では売り圧力をどの程度吸収できるかが注目されます。足元の需給を推し量るには非常に難しい局面ですが、日足ではボリンジャーバンド(25日)における「バンドウォーク」(+2σに沿った動き)が継続しておりますので、+1σを割り込みバンドウォークが途切れるまではこの基調を尊重するべきと認識しております。

しかし、現状上場来高値水準に達したという事実も無視できませんので、将来への期待感と現状を冷静に分析し、対応しては部分的に利益確定を実行する(アクションを起こす)場面にあると認識しております。

 

株価は企業業績など「将来」のファンダメンタルズを「今の株価」に織り込む特性があります。しかし、「将来」は不確定なものですので市場価格は間違いを起こすことも珍しくありません。しかしその反面、「将来」を織り込むという特性が「思惑先行型の急騰相場」や「ボラティリティ」発生の原点にもなっており、この株価変動メカニズムが投機相場発生の重要な要素にもなっております。

アートスパークHD(3663)の2016年高値を付ける過程や今の相場においても、「将来」を織り込む動きが先行しております。しかし、2016年高値に達したと言っても、現在の業績などのファンダメンタルは当時から大きく飛躍している点が異なっておりますので、株価上昇のポテンシャルは依然残されていると考えております。この点が「部分的な利益確定」と判断する背景にあります。