乾汽船(9308)
9月24日の終値は2848円(+292円)となっております
夏場から急騰した海運株ですが、バルチック海運指数の上昇基調に合わせて株価は上値追いが続いております。乾汽船(9308)の時価は、既にバブル期の水準まで上昇しており、今後見通しや判断が難しい局面を迎えております。
この銘柄は投機筋絡みの低位株として、7月後半に弊社の有料レポートで配信した経緯がありますが、海運関連株の中でも時価総額が1000億円に満たない小型株であり、浮動株も少ないことが特徴です。
短期狙いの投機性の高い資金がボラティリティを求めて流入し易い銘柄であることから、他の海運株よりもパフォーマンスが高くなる傾向があります。今の株価の動きは、バルチック海運指数との連動性も高く、同指数の動きもこの株価に大きく影響してくることが見込まれますが、今後の動きが非常に気になる局面を迎えておりますので、見通しやポイントを記事にしました。
※乾汽船(9308)の日足チャート
乾汽船(9308)株価は強い動きが続いておりますが、需給面では売り残が買い残を上回る好取組となっており、売り残はそのまま将来の買い需要になる為、好取組の状況下では「上がり易く下がり難い」相場が続く傾向があります。
ばら積コンテナ運賃の高騰を受けて、今期は大幅な利益増を見込んでおりますが、長引くコンテナ運賃の高騰から今後の増額修正も有り得ると見ております。
しかし、好調な業績の背景が海運運賃の高騰という「一過性」の要因である点には留意しておく必要があります。乾汽船(9308)はバリュー株ですので、予想PER10倍程度は割安感があるとは言えません。
ただ、海運を取り巻く状況は、世界的な巣ごもり消費の拡大や、ワクチン普及による経済活動の再開に伴う需要急増が背景にありますので、今もコンテナ船市況の高騰が続いております。
加えて、コロナの影響で各国は防疫上の安全に配慮する為、漁船の乗組員の上陸に厳しい規制を実施している関係から、世界中の港湾が渋滞しており、入港できずに海上待機が長期化している背景も考慮すべきでしょう。
消費財を運搬するコンテナ船の不足や人手不足の状況は解決されておらず、先行き見通しが立たないことが今のバルチック海運指数上昇の背景にあります。また、この輸送コストの増加は世界的なインフレの要因にもなっており、「一過性」とは言え、いつまで続く「一過性」なのか見通しが立っていない点は、今後の海運株相場を支える要因として注目しておく必要があります。
これらの不透明感要因は、バルチック海運指数や海運株相場を「思惑」で動かしている背景にもなっていると考えており、短期目線の相場の動きでは、今後もボラティリティを狙うチャンスはまだ出てくると見ております。
※バルチック海運指数
注目すべきは、世界の消費需要が今後クリスマスや年末商戦を迎えること。ピーク感も出てきた欧米景気ですが、伸びが鈍化しつつあるものの、需要は高水準維持が見込まれます。今後消費意欲旺盛な欧米の年末商戦本格化を控え、海運需要も増加するシーズンを迎えております。
この銘柄に限らず、海運株は10-12期に売上が高く、1-3月期も高水準を維持する傾向が高いことから、海上輸送の需要が高まる時期でもあります。この影響は年末に向けた運賃市況にも影響を及ぼしてくることが想定され、乾汽船(9308)においても目先は高値圏から乱高下し易い状況から調整もあるかもしれませんが、10-11月に掛けてはもう一相場あると見ております。
乾汽船(9308)の史上最高値は、バブル期の1989年1月高値(4200円)ですが、当時のチャートから2750円から上はバブル期の高値圏を形成した水準にあたり、時価はこれに突入しつつある状況となっております。
既にこの当時の売買による需給の影響はありませんが、過去の相場で付けた水準は「心理的節目」として投資家心理に作用する為、一つの目安になると考えております。
この観点から、3200円付近、3800円付近、4000円といった過去の相場の節目となった水準は、今後の相場でも重要な節目となる可能性があります。
乾汽船(9308)の相場は既にマネーゲーム色の強い局面に突入していことから、ここからの新規買いはご法度ですが、海運株の中でも投機性が高い性質から、もうしばらくは値幅を伴う動きからから高値を塗り替える場面が出てくると見ております。