金融マーケット全体の動向を理解することは、個別株投資の投資戦略を練る上で不可欠です。株価変動のメカニズムには内部要因と外部要因があり、景気の動向、経済、政治、産業、国際情勢、為替、金融政策、など多岐にわたる要素が相互に影響を及ぼしながら投資家心理に影響を与えています。したがって、個別株投資する際には、これらの要因を考慮に入れ、マーケット全体の投資家心理とマネーの流れを把握することが、機会を最大限に活用すること及びリスク管理する上で、非常に重要な要素となります。
今週末の米国株式市場はNYダウが8営業日連続で値上がりするなど、堅調な動きを見せています。
このような市場の動きは、5月3日に発表された米雇用統計以降、労働市場のひっ迫が緩んでいることを示す経済指標が相次いだことで、今後の金融政策の利下げに対する期待が高まりつつあることを示唆しています。つまり、4月の下落相場をけん引した懸念材料が、ここにきて後退していることが背景にあります。
ダウ、S&P500、NASADAQといった主要株価指数は25日移動平均を明確に上抜けており、同ラインが再び上向きになりつつあることからも、この様子が窺えます。
一方日本株は冴えない展開。依然25日移動平均を抜けたのかどうかさえ、はっきりしない状況です。また同ラインの下降も続いています。
最近の米国市場の動向や経済指標を考慮すると、いくつかのポジティブなシグナルが見られ、市場のセンチメントが改善傾向にある様子から、日本株だけ下げるということは無いでしょう。しかし、日経平均の動きから上値の重さが顕著で、投資家もこの点は気にしていそうです。
※ 日経平均の日足チャート
今後出遅れて米国株に追随するケースもあるので、目先は日経平均で75日移動平均線(橙線)や25日移動平均線(緑線)を超えて水準を切り上げることができるかがポイントとなりそうです。
また、こちらの記事でも書きましたが、ジワリ円安基調が再び強まっている点も日経平均の上値抑制要因として留意しておく必要があります。利上げに向かう日銀と利下げへ向かう欧米諸国の金融政策との政策格差や、為替の動向が株式市場に大きく影響してきます。
~一部抜粋~
一方、日本株に対する注意点として、米国株が上昇する可能性が高いからと言って、これまでのように日本株もこの動きに追随するかどうかはわかりません。米国株が上昇すると、その好況が日本株にも波及することが期待されますが、必ずしも一致するわけではありません。実際、米国株が上昇している間に日本株が下落するケースは少ないものの、日本株が方向感なくもみ合う展開を見せたり、米国株に比べてパフォーマンスが大きく後れを取ったりすることは珍しくないからです。
このように考える背景として、利上げに向かう日銀と利下げへ向かう欧米諸国の金融政策との政策格差があります。加えて、足元で再び強まる円安基調があります。円安は輸出企業にとっては有利な状況をもたらす一方で、海外投資家が日本株に投資する際の為替リスクを高めるため、投資意欲を減退させる可能性があります。東証の投資家比率がおよそ7割と言われている海外投資家が、日本株に投資することを躊躇させる要因として頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。
米国株が崩れないなら、日経平均がもみ合いでも、個別株へは短期資金が流れる地合いは続きそうです。なにより、来週は決算発表が終盤を迎えます。投資家としては、個別株の動向についての洞察は重要で、日々のIRや株価動向に注意を払うことが、賢明な投資判断につながると考えます。自身の投資スタンスやリスク許容度に合った戦略を構築し、冷静な判断を心掛けてください。