2024年夏の株式市場:ハイテク株急落が引き起こす波紋

金融マーケット全体の動向を理解することは、個別株投資の投資戦略を練る上で不可欠です。株価変動のメカニズムには内部要因と外部要因があり、景気の動向、経済、政治、産業、国際情勢、為替、金融政策、など多岐にわたる要素が相互に影響を及ぼしながら投資家心理に影響を与えています。したがって、個別株投資する際には、これらの要因を考慮に入れ、マーケット全体の投資家心理とマネーの流れを把握することが、機会を最大限に活用すること及びリスク管理する上で、非常に重要な要素となります。

 

2024年7月の株式市場は、世界的に大きく下落しました。この規模の下落を記録するのは、今年初めてのことですが、過去を振り返ると、年に1、2回程度、こうした急落が起こること自体は珍しいことではありません。今回の下落は特に、米ハイテク株を中心とした急落が投資家心理を冷え込ませており、市場全体に不安感をもたらしています。

 

なぜ株価が大きく下落したのか?

米国株市場では、AIや半導体といった分野に対する過度の成長期待から、ハイテク株が高値で取り引きされてきました。しかし、その割高感が市場で懸念され始めたことが、今回の下落の要因となっています。株式市場は、常に過熱感と調整を繰り返すものであり、今回の下落はそうした市場のメカニズムが働いた結果と言えるでしょう。

米国大統領選挙と株価

今年は4年に一度の米国大統領選挙の年であり、2024年の投票日は11月5日です。8月頃から選挙戦が本格化してくるため、大統領選挙の年の株式市場は、夏場から11月頃まで調整し易い傾向があります。次期大統領の政策方針は、今後の経済政策や企業収益に世界規模で大きな影響を与える可能性があります。そのため、選挙の結果が明らかになるまでは、投資家は様子見姿勢を強め、新たな投資を控える傾向にあります。しかし、選挙後は不透明感の後退で株高となる傾向があります。

 

日本株と円高

日本株については、米国株の弱含みだけでなく、急激な円高も短期的には日経平均を押し下げる方向に働きます。また、「米FRBによる利下げ期待」と「日銀の利上げ期待」で、これまで円安の要因とされてきた日米金利差の解消が進むことが予想され、円高が進む可能性が高まります。特に輸出依存度の高い製造業は、価格競争力を失い、業績の下振れが懸念されます。

 

※ ドル円の日足

一方で、円高によるメリットもあります。原材料の輸入価格が下がるため、国内消費向けのコストが削減される可能性があります。これにより、消費者向けの価格設定に余裕が生まれ、国内市場における消費拡大の追い風となるかもしれません。

金融市場においても、投資家は不安定な外部環境とドル円の動向次第で、リスク回避姿勢を強める可能性があります。このため、日経平均株価の動向には今後も注視が必要です。特に、企業決算や経済指標の発表が市場の方向性を左右する重要な要因となるため、それらの情報に敏感に反応する必要があります。

 

※ 日経平均株価の日足

 

総じて、日本株市場は当面、外部要因に左右される不安定な状況が続くと考えられますが、適切な政策対応と企業の戦略次第では、今後の成長機会を見出すことも可能でしょう。

 

投資家の対応

今、投資家がとるべき行動は、この株価調整のどこかで、買いを入れるタイミングを推し計ることです。現時点では、米国大統領選挙の結果が不明なため、投資家の間には依然として不確実性が残っています。このため、今後11月にかけては、株価の大きな上昇は期待しにくい状況が続くと予想されます。しかし、選挙の結果が確定し、今後の経済政策の方向性が明らかになれば、投資家心理は改善し、株価は再び上昇に転じる可能性があります。

今回の株価下落は、投資家にとって、市場の変動性と不確実性を改めて認識する良い機会となりました。短期的に見ると、株価の大きな上昇は期待しにくい状況が続くと予想されますが、中長期的に見ると、年末からの回復が期待されます。投資家はこのような市場環境を踏まえ、慎重な投資判断を行うことが求められます。