金融マーケット全体の動向を理解することは、個別株投資の投資戦略を練る上で不可欠です。株価変動のメカニズムには内部要因と外部要因があり、景気の動向、経済、政治、産業、国際情勢、為替、金融政策、など多岐にわたる要素が相互に影響を及ぼしながら投資家心理に影響を与えています。したがって、個別株投資する際には、これらの要因を考慮に入れ、マーケット全体の投資家心理とマネーの流れを把握することが、機会を最大限に活用すること及びリスク管理する上で、非常に重要な要素となります。
ここ最近の東京株式市場では、日経平均株価が1週間で約1,000円下落しており、方向感に乏しい展開が続いています。一見すると大幅な下落には見えませんが、企業業績や外部環境を背景に軟調な地合いが市場全体に広がっている状況です。特に主だった買い材料が乏しく、半導体関連株のような注目セクターも動きが抑制されています。
主要企業の2024年第3四半期決算では、業績が市場予想を下回る企業が増加しました。通期見通しを上方修正した企業の割合は約21%にとどまり、これは過去10年の平均を下回る水準です。特に、ハイテクや輸出関連企業での業績未達が目立ち、事前に存在していた業績への懸念を裏付ける形となっています。為替は引き続き円安基調が続いていますが、日銀の政策方針を背景に円高への転換が懸念されており、これが輸出企業の収益悪化への不安を呼び、投資家心理を冷やしています。
一方、米大統領選挙以降の米国市場は、テック株の上昇やFRBの利下げを背景に堅調に推移しています。しかし、日本市場はこれら外部要因の恩恵を十分に受けられていません。背景に、国内では企業業績の不安に加え、衆議院選挙による政策運営の不透明感が投資家心理を抑え込んでいる状況であり、これらの要因が複雑に重なり、日本市場全体の動きが弱含んでいます。
※ 日経平均の日足
現時点で、日経平均は節目となる38,000円を割り込むことはありませんが、市場全体に主だった買い材料が見当たらない状況が続いています。特に、20日に予定される米国半導体大手エヌビディアの決算発表を前に、半導体関連銘柄への買いが手控えられています。投資家はエヌビディアの決算内容を注視しており、その結果が出るまでは、様子見姿勢が強まる可能性が高いでしょう。
一方で、軟調な市場環境の中でも短期資金が集まり、活発に物色される銘柄も存在します。例えば、弊社有料レポートで取り上げてきた、セレス(3696)やネットプロテクションズホールディングス(7383)、セルシス(6632)などの個別株には、投機系ファンドや投機性の高い資金が流入しやすい傾向があります。また、個人投資家も投機色の強い相場に惹かれ、テーマ性や材料性のある銘柄に関心を向けています。
この為、方向感を失った市場環境の中で、個別株の「銘柄選別」の重要性はますます高まっています。この手のボラティリティの高い相場は、一定のリスクがある一方で、投資家に値幅取りの機会を与えることも事実です。特に短期的な値動きを狙う投資家にとっては、これらの銘柄が魅力的なターゲットとなっています。短期資金はテーマ性のある銘柄や業績が良好な中小型株、特定の材料が出た銘柄に流入しやすい特徴があります。
日本株市場全体と投資家心理が好転するには、政治の安定と明確な経済政策によって投資家の信頼を取り戻すことが不可欠です。しかし、現状では方向感に乏しい相場がしばらく続く可能性があります。一方で、短期資金が流入し、活発に取引される銘柄も見られるなど、一部では市場の活力が感じられるのも事実です。こうした状況下では、個別株の「銘柄選別」が今後の投資成果を左右する重要なポイントになるでしょう。