グロース市場に試練、過熱相場の反動と今後の物色シナリオ

個別株投資では、景気や経済、政治、為替、金融政策など、マーケット全体の動向を把握することが不可欠です。これらの要因は相互に影響し合い、投資家心理や短期マネーの流れに影響を与えています。投資機会を活かすためには、こうした外部環境や市場心理をしっかりと理解することが、物色トレンドを見極めるうえで非常に重要です。

 

東証グロース市場250指数は、ここにきて下落が目立つ展開となっています。米国市場や日経平均が比較的安定した動きを見せる中、グロース市場の軟調さは一際目立っており、その背景には、4月の急落以降に続いた上昇トレンドの反動があると考えられます。

 

※ 東証グロース市場250指数の日足

 

4月の急落後、グロース市場は約2か月以上にわたり回復基調を維持し、多くの銘柄で急騰が見られるなど、短期資金が積極的に流入していました。

この背景には、米国大統領選を控えたトランプ前大統領の外交・通商政策への懸念も影響していると見られます。とりわけ関税強化などの政策リスクが意識される中、日経平均をはじめとする大型株には先行き不透明感が広がり、資金が流れにくい状況となっていました。その結果、相対的に内需依存度が高く、為替や景気動向の影響を受けにくい新興銘柄への資金流入が促され、グロース市場が消去法的に選好される展開が強まったと考えられます。

 

特に5月から6月にかけては、テーマ性の強い個別銘柄や業績期待のある低位株などに投資家の関心が集まり、日経平均や米国株指数よりも過熱した印象がありました。相場においては「上がったものは下がる」のが自然の流れであり、今回の調整も過熱の反動として妥当な動きといえるでしょう。

しかしながら、足元ではその反動としての利益確定売りや、需給の緩みが指数全体の重しとなっています。

 

チャート上では25日移動平均線を割り込み、売り圧力が日を追うごとに強まっている印象です。現時点では75日や200日移動平均線はまだ下回っていないものの、今後これらの水準が下値の節目として意識される展開が想定されます。

テクニカル指標も軒並み弱含みの状態が続いており、RSIは売られ過ぎの水準に接近しており、MACDも陰転が継続しているなど、依然として反発の兆しは乏しい状況です。

 

今後については、過熱感の解消が進む一方で、資金の流れがグロース市場から東証プライムなどの大型株へと移行する可能性も想定されます。また、グロース市場内においても、これまで物色されていたテーマやセクターから、新たな材料や成長分野に焦点が移る「テーマチェンジ」が起きる可能性が高まっています。これにより、指数全体が調整局面にある中でも、選別的な物色が強まる展開が予想されます。

総じて、現在の下落局面は、4月以降の急速な上昇に対する健全な調整の側面が強く、今後の反発にはテクニカル面での明確なシグナルを確認した上で、慎重に対応することが求められます。今後の物色対象の変化にも柔軟に対応し、テーマの転換を見極める視点が一層重要となるでしょう。