ウクライナ情勢の一段の緊迫化を受けて先週の日経平均は週間では500円ほど値を下げております。
当初は早期に終結すると思われていたロシアのウクライナ侵攻が長期化の様相を呈しており、これを嫌気した売りが出ております。
週を通してウクライナ問題の長期化が、「先行き不透明感」としてマーケットで大きく膨らんだ一週間となっており、市場は「先行きが見えないことを最も嫌う」動きが株価にも表れております。
エネルギー大国のロシアに対する国際決済システム(SWIFT)からの排除は、ロシアへ大きな打撃を与えると同時に、西側諸国にとっても大きな痛手になります。先週の原油価格(WTI)は90ドル付近から113ドルまで急騰しており、ロシアの「SWIFT排除」の悪影響が最も現れた商品の一つと言えるでしょう。
このウクライナ問題が、足元のインフレ加速要因となっており、マーケットではインフレ加速に伴う景気減速懸念も意識され始めており、スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)への関心も高まっております。金融政策は景気対策と、インフレ対策は真逆の方針を採る必要がある為、FRBをはじめとする各国中央銀行の舵取りは、今後困難を極めそうです。
この様な影響から、先週のNY市場は今後の方向性を見出せない値動きが続きました。
※米S&P500の日足チャート
米国市場では、ウクライナ情勢が経済に与えるインフレや景気後退を危惧しつつ、FRBの動向に関心が高まる局面となっております。
一方欧州は、EU経済の中でもロシアの影響を大きく受けるドイツDAXなどは底探りの展開となっております。
※独DAXの日足チャート
日米と異なり、地理的に戦地に近く、今回の問題の当事者でもありますので、株価はショック安の状況と言えます。
日本株は欧州株ほど下げてはいませんが、1月安値圏まで水準を切り下げており、米国株よりも弱い値動きとなっております。
※日経平均の日足チャート
日本は力強い景気回復が続いている米国とは異なり、「回復の遅れ」や「岸田リスク」が株価の重石となっている様子が窺えます。また、今回のウクライナ問題で小麦や原油の高騰の悪影響が懸念され、日本国内でもインフレの兆しが強まっている背景から、商品・サービスへの価格転嫁が遅れると、ジワジワと経済へのダメージが拡がる恐れが出てきております。
今週は9日の国内GDP(10‐12月)をはじめ、10日にはECB(欧州中央銀行)の政策金利発表、10日米消費者物価指数(インフレ指数)と、市場を大きく揺さぶる可能性のある注目イベントが続きます。15~16日には米FOMCも控えている為、神経質な展開が想定されますが、先週は欧州を中心に株式市場が大きく下げた後だけに、もみ合いが続いている米国株に方向性が出れば、日本株もこれに追随する可能性が高いと見ております。