足元の株式市場が米国発の金融リスク(SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレーバンク破綻)で、来週も株式市場全体が大きく荒れる可能性が出ています。
先週末のNY市場では「リスク・オフ」が強く意識され、リスク資産(株式)から安全資産(債券、貴金属、現金等)へ資金が流れている様子が見て取れます。
現段階で、今回の米銀破綻の影響がどの程度金融市場に及ぶかは見通し難いものの、この週末にSNS等で騒がれているリーマンショック級の「連鎖的な信用収縮による金融危機」へ発展する可能性は低いと見ています。
今回破綻したシリコンバレーバンク破綻は、債券投資に偏った体質で、昨年からの利上げ政策による債権価格の下落で大きな損失を被ったことが背景にあります。FRBが利上げを開始した一年前には、既に債券価格の下落(利回り上昇)は想定されていたことです。利上げ政策を開始した時点で、いずれこのような事態が起きることは想像に難くありません。
リーマンショック時の金融機関破綻との違いは、損失の元が「債権」であるか無価値に等しい「サブプライムローン」であるかの違いです。
リーマンショックは、著しく価値の低い(若しくは無価値に等しい)サブプライムローンが世界中にばらまかれ、それらがある日突然紙屑になった経緯があります。今回は債券投資で大きな損失を出したとはいえ、債券が無価値になったわけではありませんので、
今回の事態を受けて、今後このような金融機関が出てくる可能性はあるでしょう。しかし、この週末にSNS等で騒がれているリーマンショック級の「連鎖的な信用収縮による金融危機」へ発展する可能性は低いと見ています。
「債券投資に偏り」という点では、日本国内の地銀や農林中央金庫といった金融機関に同様の傾向が見られます。この為、昨年秋頃から上昇基調が続いている銀行株セクターは、疑心暗鬼から売られ易い環境が続くと見ています。
※ 銀行株指数(1615)
「投資家の動揺」という観点からは、シカゴオプション取引所のVIX(恐怖指数)に注目。この指数は、オプション取引で投資家が株価急落のリスクが高まったと判断した時に、オプション取引を活発化させることから急騰する傾向があります。
この指数の動きに投資家のセンチメントが表れることから、恐怖指数とも言われています。
※ シカゴVIX指数
VIXは金曜日に一時29ポイントまで跳ね上がりましたが、昨年の下落相場で付けた高値は38ポイント付近です。この水準を超えていないことから、現時点の投資家の危機感はさほど高くはないと見ています。
仮に今回の一件から「連鎖的な信用収縮による金融危機」へ発展するならば、VIXは軽く45ポイントを超えてくると見ています。
リーマン級の急落相場に突入するリスクは少ないものの、警戒すべきは先週木曜日からの下落でNY株式市場がダウントレンド入りした可能性が危惧されます。今回の米銀破綻が引き金となり、米国株価指数の下落基調が鮮明となりつつある点に注意が必要。
ただ、NY市場の急落はシリコンバレーバンク破綻が露呈した9日木曜日から始まっており、週末に営業日で既に大きく下落しています。
金曜日の取引終盤にはVIXが29ポイントから24ポイントまで下落している様子から、来週序盤は落ち着きを取り戻す可能性があります。この影響は来週の東京市場でも出てくると見ており、月曜日朝の売りが一巡した後の動向に注目しています。