ミネベアミツミ(6479)
2026年6月12日 14:00時点の株価は4,290円(+29円)となっています
3カ月で株価がほぼ2倍になる。相場ではそう珍しくない話です。ただ、その多くは期待だけが先に膨らみ、実体が伴わないまま徐々に失速していきます。3月の2,500円台から6月初旬に5,000円近くまで上昇したミネベアミツミ(6479)は、その逆でした。背景にあったのは、上方修正と過去最高益を受けて引き上げられた目標株価を、実勢の株価が次々と上抜けていく展開です。この「評価が追いつかない」状態こそが、今回の急騰の正体でした。
転換点は5月の決算です。同社は5月11日に当期利益予想を710億円から990億円へ上方修正し、翌12日の本決算では売上高1兆6,643億8,700万円、営業利益1,039億7,900万円といずれも過去最高を更新しました。これを受けて証券各社の目標株価は、5月13日に4,000円、28日に4,700円、6月初旬には5,500円とわずかな間に切り上がっていきます。株価が目標に届くたび、より高い目標が示される。この連鎖が、上昇に切れ目をつくりませんでした。
なぜ、この再評価は期待先行に終わらなかったのか。背景には、はっきりとしたテーマ性があります。同社は、生成AIの普及で膨らむデータセンター需要を、足元の部品で支えるメーカーです。サーバー冷却に欠かせないファンモーターで世界シェアの5割超を握り、主力のボールベアリングもサーバー向けと航空機向けの需要が重なって伸びています。半導体や演算装置のように脚光を浴びる存在ではありませんが、それらが動き続けるための土台を握っているのは同社です。AI関連という言葉が先走りがちな相場で、その実需が決算の数字で裏づけられた点が、相対的に低めに置かれていた評価を一気に巻き戻しました。
※ ミネベアミツミ(6479)の日足
もっとも、最終利益の急増を額面どおりに受け取るのは禁物です。当期利益が前期比6割超も伸びたのは、保有する金融資産の評価益を計上した影響が大きく、本業を映す営業利益の伸びは1割程度です。来期はその反動で最終利益が減る会社計画であり、株価が織り込んでいるのは見かけの最終益ではなく、本業の成長性のほうです。予想PERは20倍前後。過去最高益の精密部品メーカーとして割高とまでは言えませんが、楽観だけで買い上がれる水準でもなくなってきました。
では、ここからどう見ればよいのでしょうか。足元では、6月5日前後の高値を境に、株価が数日で1割前後の調整を入れています。ただ、この下げは同社の評価が崩れた結果ではありません。米国とイランの軍事的な応酬で中東情勢への警戒が強まり、AI・半導体関連株がそろって売られた、相場全体の地合い悪化に巻き込まれた格好でした。
もっとも、その地合いには変化の兆しも見えています。トランプ米大統領がイランへの攻撃中止を表明したことを受け、12日の東京市場は懸念の後退から買い戻しに転じ、AI・半導体関連にも資金が戻り始めました。同社もその流れに乗りやすい位置にいます。ただ、これはあくまで一報への反応にすぎず、楽観できる状況に至ったわけではありません。終結はなお「期待」の段階で、情勢が再び傾けば、真っ先に売られやすいのも同じAI・半導体関連です。
当面の分岐点は、上昇の起点となった4,000円台前半を保てるかどうか。割り込むようなら、再評価の勢いがいったん途切れたサインと見たほうがよさそうです。テーマと業績の裏づけは確かなだけに、慌てて高値を追わず、相場全体の落ち着きを見極め、数字とチャートで確認してから判断したい局面です。
弊社の有料レポートでは、この銘柄を今年4月中旬、株価2,800円台の段階で取り上げており、データセンター・AI向け部品という実需に裏打ちされたテーマ性と、短期資金が向かいやすい値動きの両面に着目し続けてきました。今後も弊社の有料レポートでは、こうしたテーマ性と短期物色の妙味を兼ね備えた値幅取り候補を、詳細な分析とともに取り上げていく予定です。
弊社の有料レポートでは、データセクションを4月初旬に1300円台で取り上げており、AIインフラ事業の収益化期待と、短期資金を呼び込みやすい投機性の両面に着目してきました。今後も弊社の有料レポートでは、こうした成長シナリオと値幅取り妙味を併せ持つ銘柄を、詳細な分析とともに取り上げていく予定です。

