一時は60ポイントを超えた(2020年3月の新型コロナパンデミックで株式市場が暴落して以来)シカゴVIX指数(恐怖指数)ですが、現在は22〜23ポイント付近まで下げています。金融市場は、落ち着きを取り戻しつつあります。今回の暴落相場で、日米の株式市場は値幅調整が一巡した可能性が高いと考えています。一方で、主要株価指数の日柄調整は依然甘く、引き続き不安定な地合いが続く可能性があると考えています。
※ 日経平均の日足
今週は、日銀の政策転換と米国のリセッション懸念による市場混乱が、今週の世界的なマーケットに大きな影響を与えました。特に注目されたのは、7月31日に発表された日銀の追加利上げです。これは、日銀が継続的な利上げ政策に転じるという歴史的な決断であり、かつてマイナス金利まで採用していたことを考えると、歴史的な決定と言えます。
これを受けて、低金利通貨(円)を借りて高金利通貨に投資する投機筋は、日銀の利上げによりこのトレードの魅力が減少したため、投機的且つ膨大な円売り資金の巻き戻しを誘発。この急激な動揺は、円キャリートレードの脆弱性を露呈し、円相場の急変動と株価の急落を受け、投機的トレーダーが円安方向に賭けるポジションを大幅に縮小しました。
特に投機筋による急激なキャリートレードの解消は、規模の大きさと売買の荒さから、円相場の急変動と株価の急落を引き起こしました。米国商品先物取引委員会(CFTC)のデータからは、投機筋の円の売り越しポジションが大幅に減少していることが確認できます。特にヘッジファンドは、円安方向への賭けを大幅に縮小しており、キャリートレードが大きく巻き戻されたことが明らかです。市場関係者の間では、日銀の利上げがこの動きを引き起こしたという見方が強く、これが市場のボラティリティを一時的に高める要因となっています。
9日時点で、市場は徐々に安定を取り戻しつつありますが、長年積み上がってきた円売りポジションの規模を考慮すると、今回の急落でこれが一掃されたとは考えにくい状況です。このため、今後も市場のボラティリティが高まるリスクが残っており、投資家にとって警戒が必要な状況が続いていると言えます。
一方、米国ではFRBが利下げ政策への転換を検討しており、これは米経済のリセッション懸念を強める要因となっています。今週、ゴールドマンサックスは米国のリセッション確率を25%に引き上げ、JPモルガンも同様に年末までのリセッション確率を35%に引き上げています。この背景には、米国大統領選挙が近づくにつれ、経済の不透明感が増していることが挙げられます。これにより、米国市場では乱高下リスクが残る可能性が高いとされています。
現在、VIX指数は20ポイント台前半まで下落しており、市場は一時的に落ち着きを取り戻しているように見えますが、日米株価共に値幅調整は一巡したものの、日柄調整がしばらく続く可能性があります。特に、米国大統領選挙が行われるまでの期間は、市場のボラティリティが再び高まるリスクが存在すると考えられます。
このように、日銀の利上げと米国のリセッション懸念は、今後も市場の不安定要因として注目され続けるでしょう。投資家は、引き続き慎重な姿勢を保つ必要があります。