日本電波工業(6779)、AIデータセンターの「実需」が動かした急騰劇、投機系ファンドが仕掛けた2段階相場

 

日本電波工業(6779)
2026年6月4日の終値は4,335円(+150円)となっています

6月4日の東京株式市場は前日急伸の反動で利益確定売りが広がり、日経平均株価は931円安の大幅反落となりました。指数全体に手じまいムードが漂う一日でしたが、日本電波工業(6779、以下NDK)は4,335円で引け、年初来高値を同日中に4,555円まで更新しています。2月13日の安値977円からの上昇率は約4.6倍に達しています。

 

買いの根拠は、AIデータセンターという「工場」の実態にあります。世界中で建設ラッシュが続くAIデータセンターは、電力・土地・ハードウェアを大量に消費する物理インフラです。その内部では光トランシーバーが膨大な数で組み込まれており、基準クロック源として水晶発振器が必須となります。NDKは世界トップクラスの水晶デバイスメーカーとして、この供給チェーンの中枢を担っています。データセンターが増えれば光トランシーバーが増え、水晶発振器の需要が増える。この連鎖構造こそが、投資家を引き寄せた根拠です。

5月14日発表の本決算では前期最終利益が一転増益で着地し、2027年3月期は売上高606億円・営業利益40億円を見込んでいます。先行投資で利益が圧迫されてきた局面から、収益貢献フェーズへの転換点と受け取る向きが増えています。量産体制はすでに始動しており、「期待」から「実需」への移行が業績数字に表れ始めています。

 

※ 日本電波工業(6779)の日足

 

ただ、株価水準を冷静に見ると話は別です。終値4,335円でのPERは43.2倍。AIテーマの成長株として見れば突出した数字ではありませんが、NDKは売上の半分近くを車載向けが占める複合企業です。AIデータセンター向けが業績の主役になるのは2027年3月期以降であり、現在の株価はその先の成長まで相当程度を先取りしています。アナリストの平均目標株価が1,340円(5月25日時点)にとどまる事実は、プロの目線と市場の期待値の乖離を示しています。

 

この値幅を生んだもう一つの軸が、短期資金の動きです。急騰前の時価総額は500億円にも届かない軽量級でした。こうした銘柄に大口の買いが集中すれば、需給は一気に傾きます。4月20日の初動局面では出来高が前日比671%増、約492万株が単日に売買されました。普段の10日分近い出来高が一日に凝縮されたこの日の値動きは相場の火付け役となり、翌日以降の追随資金を呼び込む起点となりました。出来高が細る局面で静かに株を買い集め、節目を上抜けた瞬間に追随買いを一気に引き込む。需給と市場心理を読み切って値幅を取りにくる、短期筋が得意とする手口です。

5月の第二波も同じ構図で動きました。決算後の調整局面で浮動株を吸収し、投資家の関心が薄れたタイミングで再び大口の買いを入れる。反転初動で「乗り遅れ感」を刺激して追随を誘うこの手順が、テーマ買いと重なって値幅をさらに押し広げました。

 

日足チャートを見ると、こうした動きが2段階で進んだことが確認できます。RSIは76.74と買われすぎ圏にあり、5日移動平均線(3,803円)からの乖離は14%超です。MACDのヒストグラムは縮小傾向にあり、上昇モメンタムの鈍化も始まっています。押し目での大口買いは続いていますが、過熱シグナルが複数重なっている点は見落とせません。

実需の構造は崩れておらず、AIデータセンターの建設ラッシュが続く限り受注の裏付けはあります。ただ、テーマの本物さと株価水準の妥当性は別の話です。中長期的な魅力はまだまだ残りますが、短期目線では過熱感の解消と押し目形成を見届けてから、上昇再開を確認して動く局面といえるでしょう。一方で現状はトレンドが崩れておらず、崩れるまでは売る理由もありません。警戒しながらもトレンドには乗る、その両立が今この銘柄と向き合ううえでの基本姿勢になります。

 

弊社の有料レポートでは、この銘柄を3月中旬に1,200〜1,300円付近で複数回取り上げており、AIデータセンター向け水晶デバイスという実需の構造と、短期資金が絡む需給妙味の両面に着目してきた経緯があります。今後も弊社の有料レポートでは、こうした実需テーマと投機性を兼ね備えた値幅取り候補を、詳細な分析とともに取り上げてまいります。